花組ファントム

2020/09/10初見

2006年花組ファントム


ファントムが、好きだ。
春野エリックの花組ファントムが、大好きだ。


春野さんにハマりたて当初は円盤もエリザベートしか買ってなかったけれど、春野さんの歌っている動画とか見て(小声)、すごく気になる作品があった。

それがファントム。

私はオペラ座の怪人関連の作品を人生で全然通らずに生きてきて、あの有名な旋律を聞いたことある程度。
(あえていえばFGO(スマホゲーム)のファントムくらいだろうか…でも彼イベント出てきても歌っておくれクリスティーヌしか言わんしよく分かってない……)
まあ作品を先入観なく、既存の作品と比較することなくフラットな状態で観られたのでそれはよかったと思います。

そんなわけで宙組の初演もその後の再演もちゃんと見てません。
(追記:2021/03/25 2018年雪組ファントム視聴しました!)
そんなにわかオタの備忘録です。

まず始めにお断りしておきますが、基本的に「大絶賛」のスタイルでお送りしていきます。
曲タイトルは円盤参照してます。



♪僕の悲劇を聴いてくれ
Overtureがないのですぐに春野エリックの圧倒的歌声が聴けるわけなのですが。
もうさ、歌い出しの「ぼー」で金とれるんだわ……(言い方よ)。
そんなこと言ってたらこの先毎回それ書かなきゃいけないんだけど😂
歌が上手いというのはもう周知の事実で、あえて取り立てて書くでもないかもしれないのですが、春野さんのあの独特な、なんというか現実離れした音圧?響き?迫力?周波数?なに??が「おそろしい幻影」にぴったりはまるというか。大好き。

従者のみなさんカッコイイけど判別できない。顔が判別できないというより、物理的に暗い(笑)スタイリッシュできびきび動いてほっといても飢え死にしなさそうですが、たぶんみんなエリックのこと好きなんだろうな。エリックに享受される施しの味が好きなんだろうな。本来信仰していたであろう神に見放されたような彼らが地下の王に拾われてそこで暗くもじっとりとした偶像崇拝が根付いていたら素敵じゃん。妄言です。

エリックがキャリエールに言う「入ってくれ」がなんか甘くていい。
甘いというか甘えてるというか。
キャリエールに愛されている自覚というか自信、信頼かな、は確実にもってそう。
エリックの役作りで顕著に差が出るのが、キャリエールとのやりとりで現れるのかな、と思います。

(だいもんエリックは、キャリに対しては本当に子供みたいにワガママを言う感じ、地団駄を踏むような、僕を置いて見放すのかみたいな焦燥というか、環境で歪んではいるものの人間らしい子供っぽさが見えた。歯を見せて笑う感じとか。そもそもの役設定が春野エリックより若めなのかも。)

春野エリックは、なんというか……なんなのでしょうね。
純粋、幼い、というふうに講評されているのも見たのですが、それだけではないような。
彼は独りでいるときは沈痛な真顔で暗い眼をしていて、それでいて彼を愛する人といるときは(クリス、キャリ)ほとんど微笑んでいる。それが全てを諦めたような、自分の手の届くラインをわきまえているような悲しい微笑なの。クリスティーヌといる時も、それがつかの間の、泡沫の恋だと分かっていながら溺れていたがる、みたいな。
だからそういう意味では大人になっていかざるを得なかったエリック、なのかな。重ねた年月と孤独は彼を空虚なまま大人にした。
だからこそ、その空洞が満たされたラストがとっても心にくるんですが……また後述。

歴代一外界に出してはいけないエリックだとはおもうんですけどね!ともすればエリックを軟禁するキャリの酷さが際立ってしまうのですが、ゆみこ氏の誠実なキャラクターも相まって「いや、うん……他にどうしようもないよな……このエリックを世に解き放てないよな……」とちょっと納得してしまうというか。いやそれも酷いんだけどね?

カルロッタの歌声を聞いた時の不快そうな顰め面が最高〜! 絶対音感持ちゆえの神経質な感じがぴったり。素人のカラオケ聞かせたら発狂しかねない。 水や空気と同じように、良質な音楽がなければ生きていけなさそう。生きづらい天才が、より生きづらい世界しか許されなかった。

♪世界のどこに
もうさ、歌い出しの「すー」で金とれるんだわ……(デジャブ)。
歌の説得力がすごい 。ここでいう「神が授けた声」「天使の声」はまだ出逢わぬクリスティーヌのことを暗示しているのはもちろん分かってはいるのだけど、あなたこそ……!あなたの御声こそ……!と感じ入ってしまうのが贔屓心。天使の声というか大天使様というか。
ロングトーンも伸ばそうと思えばどこまでも伸びるだろうに語尾がふっと溶けていくのがなんともいえない情感のこもった愛おしさで好きなんですよねえ……。


♪この場所は私のもの
カルロッタ様の持ち歌。あー大好き笑
タキさんの厄介でイヤーな御局様感が、自然すぎておっかないです。なんならうちの職場に前いた御局様にそっくりすぎてトラウマ刺激されるレベルです。
余談ですが、職場で1人になるとマスクの下ですーぐ歌っちゃうんですが、最頻で口ずさんでいるのがこの曲です。自己肯定感爆上がり😂💫


さて。カルメンのリハーサル場面。

まっつ〜!みわっち〜!そのか〜!
流石に当時の花組ばかり観るようになって顔と名前が一致するようになりましたが、初見の時は分からず、分からないながらもこの場面の桐生園加氏に一目惚れしたのが懐かしい記憶です。いやめちゃくちゃ格好よくないですか???ハンサムすぎるんですが???イケメンというよりハンサム!!!最高。


♪君は音楽
大…………っ好き…………。😭💕
そもそもファントムをどうしても観たい!円盤買っちゃお!と決意したきっかけがここのシーンを動画で見てしまったからなので……(小声)。
「比較しての批判するくらいなら黙っとこ(自戒)」って言ってた舌の根も乾かぬうちにあれですが、この曲は!この曲だけは!だれがなんて言っても春野さん×彩音ちゃんが一番……一番好き……!!
クリスティーヌとしては歌唱力うんぬんとか言われていますが、私彩音ちゃんクリスティーヌめっちゃ好きなんです。初見の贔屓目だとしても。
そりゃもちろん歌上手いに越したことはないんですけど、これはエリックの物語で、主人公はエリックだから、まあ多少ふわふわしててもエリックにとって天使の歌声であることが再重要なのであって。
キーである「君は音楽」と「私の真の愛」に重点が置かれてれば、私はいいかな〜って(贔屓目)。
彩音ちゃんかわいい。ぽわ〜っとしててどこか夢見心地で、若くて初々しいのもあってまさに春野エリックが「先生」って感じで、手を引かれて歩きながらぽ〜っと見つめてるのもかわいい。春野エリックの愛おしげに切なげに見つめるまなざしもすき……。いわゆる宝塚文化の「お慕い芸」と言われるものかもしれませんが(「芸」とかいうのあんまり好きではないんだけど)、メタ的な視線でいってもお二人の関係性にも似合ってて素敵で好きです。
んで彩音ちゃんクリスティーヌの好きなのは、独唱だとやっぱりどうしても物足りなさがあるのに、春野エリックと一緒に歌うとすっごく魅力的な響きになるところ。
それが顕著なのがYou are musicだと思ってます。HOMEもいいけど😊
春野エリックの「ドレミファソ〜ファレ〜ミド〜ぉぉぉおおおオオオ〜〜〜You〜are〜 music(ノンブレス)」があまりにも最高なのは今更語るべくもないですが。いつ聴いても鳥肌ものです。重なる彩音ちゃんの高音が綺麗で、本当に二人の調べは舞い降りた天使……よよよ……すき……。はぁ……。


ビストロオーディションやらタイターニアやらあり。
第二幕へ。

余談ですが、この♪君の音楽なしに について、春野さんとだいもんの対話番組で春野さんが「あの2幕始めの曲難しくない?」とか仰っていてこの方にも難しい歌とかあるんだ……などと思ったり。いやめっちゃ難しそうな曲なんですけどね。綺麗な旋律。

1幕のキャリエールとのやりとりが穏やかだったから、2幕の激昴したエリックとのやりとりが対照的でいいな。でも結局は彼は微笑うんだ、あの悲しいかおで。

エリックの物語。キャリエールの懺悔。

ヤリ捨てキャリエールはどう足掻いても擁護できないのがつらいところ。

りりかちゃんのベラドーヴァ、お歌も素敵なんだけど表情や仕草が秀逸。ボロ布を纏って、至上の幸福に満たされた微笑みでエリックに頬ずりするところが大好き。

薬草ってまあ麻薬とかそっち系だと解釈してるんですけど、それがエリックの奇形に繋がったとしたらやっぱり全部キャリエールのせいなんですよネー。

でました、脅威の新人ことののすみちゃん。幼少エリック。パレルモに引き続き怪演ですね。かわいい。
ののすみちゃんのこの絶叫がさぁ、後の春野エリックの絶叫にすっごくシンクロしてるんですよね。うわーん。


さくっとカルロッタ殺害シーン挟みつつ、虚構の楽園の森へピクニック。

ここの背景の「森」がめっちゃ日本昔ばなし風なの気になってしまう笑。

この詩集をくれたのもキャリエールなんだろうな。

春野エリックからあまりこう、マザコン的なじっとりとかガツガツな飢えとかは感じなくて。母親への想いっていうのも、無条件にありのままの自分を愛してくれていた人がいた、そんな幻想みたいにぼやけた昔の思い出を夢にみるようなすっごいイノセントな愛というか……。

♪私の真の愛

なので、この曲が刺さるんだよなあ。
私が彩音ちゃんを好きなところ、初々しい少女の表情や振る舞いと、穏やかに包み込む母性を相反せずに持ち合わせているところなんですね。

この曲をもっと上手く歌える人はいるんだけど、優しく語りかけるような、そっと抱き締めるような彩音クリスティーヌの歌い方好きなんだわ。

そして、仮面を外した素顔のエリックに耐えられなくなって逃げ出すクリスティーヌ。

どうしてもきっついシーンなんですが、キャーっと叫んで駆け出すよりも、彩音ちゃんクリスの声も出ないままに震えて後ずさって行ってしまうほうがまだダメージ少なくてこころなしか優しくていいな。

うわぁあああ──!

ここ、ここの、春野エリックの絶叫が😭先述の幼少エリックそのままなんですようおんおんおん……。

諦めて、ほんの少し期待して、やっぱり裏切られて傷ついて、引き裂かれる痛みのままに声をあげて、そうして心の支えの詩集をそらんじるとき、彼はまた哀しい微笑みをたたえている。

ううううう😢

クリスティーヌに母性があるとは言ったんだけど、それでもクリスティーヌはまだ若い娘。抱き締めようと回した手はまだ小さかった。かりそめの、憧憬に似た愛情では彼の積み重ねてきた暗い孤独を受け止めきれなかった。顔だけじゃないんだと思ってる、彼が素顔をおそるおそる晒したとき、きっと彼の深淵の深さも垣間見えてしまったんだと思う。

だからあんまり「期待させといて逃げ出すなんて酷い悪女だぜクリスティーヌ💢」とは思わないんだよな、個人的には。聖人でもない少女には重すぎたのよね。エリックへの愛も嘘じゃなくて、でもこわくて……。フィリップに縋り付きながらも「彼に謝らなければ!地下へ戻らなくては!」となるのも頷けるというか。事故現場とか火災現場から思わず逃げ出してちょっと冷静になってから「いけない、救急車を呼ばなくては!!」となる感じというか。善し悪しはさておき、人間らしいと思うけどな。

そして事態はクライマックスへ。

ここからおさゆみ独壇場です。

好きすぎて語れない……んですがあ。

「結局はよかったんだよな、僕がこの世に生を受けたことは。音楽を耳にすることができたんだから。」
春野エリックが言うと説得力が凄い。
音楽のために生きて、音楽だけを拠り所にできた孤独のひと。
陳腐に言うと「生まれてきてよかった」というようなことを言うエリックに、そうとも、と答えるゆみこキャリエールの、それまでずっと沈痛な面持ちでいたのにそのとき初めてふっと表情が柔らかくなるの、好きです。
クリスティーヌとのつかの間の愛を振り返って「まあそれも悪くないな。そんな瞬間なら生きるに値する。」とやっぱり笑うエリック。噛み締めるような呟きが、強がりでなく本当にそう想っているんだろうな、と思わせるようで。でも空虚を埋める愛を知ったエリックは、もしこの先生きながらえたとしても再びの孤独に耐えられるか?と考えるとなんとも言えないところ。無知な孤独よりも愛の温かさと喪失を知ってしまってからの孤独のほうが耐えられなさそうだけれどな……他作品の名前出してアレですが、エロール様やリュドヴィークのように、さあ。


♪お前は私のもの

( ; _ ; )


(´;A;`)


。゚(゚´Д`゚)゚。


もう何度観たか分からないですけど、毎回このお二人の銀橋デュエットで涙腺をやられてしまいます。

お二人の声質ってとても近しい柔らかさがあって、ユニゾンがぴったりと重なって最高に美しい。

春野エリックは、やっぱりゆみこキャリエールを父親だと薄々、というかほとんど信じていたんだろうなあ。キャリエールから愛がだだ漏れだし、でも向こうが明かしたくないのならそれまでずっと今の関係のままでいいと思って諦めていたんだろうなあ。エリックからは、キャリエールに愛されているという自信…でもないけど、信頼、確信、があるように思えて。今度こそ最後まで裏切られなかった愛情を言葉にして貰って、ずっと抱えていた心の空洞をやっと満たすことができた。

「お前はわたしの生きがいだ」
その言葉を貰って、この上なく澄きとおった表情で返すのが
「いつか僕をあなたの手で安らかに眠らせてほしい」
なんだもの。エリックも分かってるんだよね、自分の安らぐところは、もうその最果てしかないことを。
「お前の望みはきっと叶えよう」
そう返すしかないけれど、これがキャリエールにとって唯一残された愛の結び方なんだよね。

シナリオだけを辿るならキャリエールには同情の余地はないはずなんですけど、ゆみこパパにはやたらと感情移入してしまうのどうしてだろうな。愛かな!

ようやく正面からしっかりと抱き締め合えた二人。

もう、もうここで幕でもいいよう。゚(゚´Д`゚)゚。

でもそうはいかないのが現実。

結局自分の手をすり抜けてクリスティーヌを追い求めるエリックに、振り返らないエリックに、何度も名前を呼びかけるパパが切ない……。差し伸べた手は届かない。

フィリップを刺そうとするときのエリック、一瞬ですがめっちゃ悪い顔してて好き。クリスティーヌにやめてって乞われてナイフを投げ出したあとは、あの哀しいかおなんだけどね。

もうほんと、この、四方から鎖で捕らえられ、まさに「怪物」として扱われている残酷さ。そして、

「ジェラルド、たすけてくれ……約束しただろう……」
の台詞の哀しい愛おしさ。

Twitterでも「ファントム毎回泣いてしまう涙腺おかしくなってしまったわ」と書いていたんですが、毎回ここなんですよ、ここのシーン。おさゆみ銀橋も泣けるんだけど、ちょっと堪えて、堪えて……そして毎回

「…はやくぅ……」

でぼろっと泣いてしまう。

春野寿美礼さまファン細すぎて伝わらない好きなシーン選手権するなら迷わずここでエントリーしたいくらい、この「はやくぅ」が私の心と涙腺に刺さってしまって。

春野様の絶唱に圧倒されて、とかなら自分でも分かるんだけど、この一言でここまで残るとは。

初見のときなんか引くほど顔面ぐちゃぐちゃなった。
ここから最期まで泣き通しだったな。
最近であんなに泣いたのFFXクリアした時以来だわ。それも父と息子の物語だったな。ツボが分かりやすいな。

(ここは父さんと呼びかけないこちらのほうが好き。
なんとなく察しはつくだろうけど、父と子の絆はお互いだけがわかっていればいいもの。
現実的な話をすると、殺人犯であるエリックの父とはっきり判明すると後々厄介なことにならん?といらん心配をしてしまうし)

そして撃たれたエリックがくずおれる、そこで壮大に鳴るのが父と子の音楽なんだもの……泣くしか……。

そしてクリスティーヌの腕に抱かれて逝くエリック。

ここで二人の最後の歌がYou are musicだから、やっぱり泣いてしまう。

彩音ちゃんの母性がここでぶわあっと花開くの。

それは先述のようにつかの間の仮初の母性だから、ずっと未来永劫母親像としてエリックに寄り添い生きていくことはできないけれど、たったひととき、この瞬間、エリックが渇望した優しい真綿の愛で包み込むことはできる。

そしてここ、最期にエリックがぽつりと「クリスティーヌ……」って消え入りそうな声で呟くんですが、私初見のときには別の音で聞き取っていたんです。

「かあさん……」って。

それは言ってしまえば空耳なんですが、でもこんなにダブルミーニングなことってある?と鳥肌。いや、聴こうとするとちゃんと「クリスティーヌ」にしか聞こえないんだけれども、想像の余地が広がるというか。

最期に彼が抱かれたのは母だったのかな、クリスティーヌだったのかな。

もちろん宝塚的な美しさで話をするならクリスティーヌ一択ですよ、コンビ愛至上主義なら。

でもこの花ファントムなら、母でもクリスティーヌでも、二人ともでも、いいのかなあって思います。なんならそこにキャリエールもいてほしいし。

そう、キャリエールね、駆け寄ることもできず距離を置いて横で見ていることしかできないのが切ない。従者たちが彼を連れて行ってしまうときでさえ。

エリックのピアノを弾いて、彼の愛を想起するクリスティーヌ。楽譜を愛おしそうに抱き締めるクリスティーヌ。キャリエールとエリックが音楽で結ばれていたように、エリックもまた彼女に遺していったんだ。



…………と、しんみりしていると容赦なくキラッキラのフィナーレが始まってしまう。初見のとき、温度差についていけずに思わず一時停止してしまった思い出笑。

黒燕尾オサ様だ〜!!すき〜!!!

謎のオサ様おさわりタイムもすき。いつもおさゆみしか見てなかったので最近王子だけまっつに謎絡みしているの知って笑いました。

パレードも大好き!歌い出すと途端に場の空気が変わるオサ様がやっぱり大好きです。でもなんでHOMEからめちゃ速いん?😂



書いたほかにもオペラ座の女の子がみんな十人十色のかわいさだし、さおたさんのジャン・クロードめちゃいい人そうで素敵だし、まとぶんの誠実そうなフィリップも素敵だ〜!

2006年版花組ファントム大好きです!!


終幕!