琥珀色代役に とある代役公演を想う

琥珀色の雨にぬれて」の感想(というか好きしか言っていないが)を書いて、読み返して……cocktailは博多座をまた別に書こうと思っているけれども琥珀色はこれで十分かな、と思って。

あ、でも代役公演のあれこれを……と浮かんだけど、不謹慎では?とか、にわかが分かったような顔して当時のことを推察するなんて烏滸がましいし当時からのファンは不快に思うのでは?とかいろいろ考え……。でも結局は自分の抱えた感情をありのまま吐き出す場が欲しくてTwitterの別垢とこのブログを作ったんだよな、という結論に至ったので、うん、書いてしまおう。

読んでいて不快に思われたらすみません。


誰かの不幸に、他の誰かの不幸を重ねて見るなんてあんまりだ。


私がやってるのはそういうことなんだな。
自戒。




私が中高生という多感な思春期ド真ん中に夢中になっていたもののひとつに、「ミュージカル テニスの王子様」がある。

代替わりを繰り返して、原作を周回して上演されている。今では若手俳優の登竜門、所謂「2.5次元舞台」の走りだ。もちろん初演当時はそんな言葉なかったわけだが。

部活の先輩が大ファンで、勧められた私もオタク真っ盛りだったのでどハマりして。

んでマラケシュの初見自分語り( https://risya-no.hatenablog.com/entry/2020/10/17/182708 )の時にも書いたけど、私はこちらも後追いファンだった。

私が一番好きになったのは2003年初演、初代青学メンバー。

そんな大好きな、初演で主人公越前リョーマを演じた柳浩太郎が、続編の上演を目前に交通事故に遭って重体になってしまった。

これはもう、調べていただけばわかる事だし、後追いの分際で語るのはお門違いな気もするので詳細はまず。

そして予定されていた続編舞台「ミュージカル『テニスの王子様』Remarkable 1st Match 不動峰」は急遽代役メンバー、それも初演時のキャストが駆けつけてくれたりして、約13日間ほどしかない中で作品を作り上げた。

中止の選択肢もあったけれど、「柳の目が覚めたとき、自分のせいで中止になったと知ったらきっと悲しむ」と、上演することを決意して。

そしてその後、柳は意識を取り戻し、後遺症に悩まさられながらもリハビリを重ねて「ミュージカル『テニスの王子様』in winter 2004-2005 side 不動峰 〜special match〜」ファンの言うところの不動峰再演にて、遠藤雄弥とWキャスト(場面により交代する)の形で越前リョーマとして帰ってきた。そしてこの公演で、越前役の2人を残して初代青学メンバーは卒業、だった。

帰ってきたと思ったら、お別れ。


ところで私は昔から好きになると円盤を揃えたくなるタイプの人種で(学生時代はお年玉とかでね……)、初代青学の出演作も座談会とか含めてすべて揃えたのだが、そういったところでは語り尽くせないほどの物語が、苦しみが、彼らにはあっただろう。わかる、だなんて思わない。けれど陳腐な言い方かもしれないが、悲しみも辛さもそれらを乗り越えた強い絆も全部ひっくるめて、私は彼らが大好きだ。


──そしてようやく宝塚に話が戻るのだが、匠ひびきさんのご病気による体調不良、休演。代役公演。

どんなに、悔しかったかと思うと。
どんなに、重荷だったかと思うと。

私なんかの物差しで喋れることでもない。インターネットの海には、当時のファンのリアルタイムな叫びが今も残っている。いわんやジェンヌさん達の苦しみをや。

それでも演じきった。みなさん必死に、愛するトップさんの不在を守ろうと。

そして、ついに東京公演では琥珀色こそ代役のまま千秋楽を迎えたが、ショーの一部分に復帰されて。
代役公演初日や序盤の演者の心境は計り知れない。宝塚は番手制度という特殊な土壌があるにしても、あれほど幾つもの事態が重なることもそう無いのでは。でも匠さんがショーの一部に復帰、つまりお芝居のほうは大千穐楽までこのメンバーでいくと決まったことで、ある種の覚悟というか吹っ切れたものはあったのではないでしょうか。どこまでも憶測の域を出ませんが。

だって私、代役版の琥珀色も大好きだ。
みんなそれぞれその役を生きている……と思う。
それってやっぱり、覚悟と愛だ。

東京cocktailはどうしたって涙無しには観られない。にわかのくせにね。だってやっぱり、この時のcocktailはチャーリーさんのために作られたものだから。会場の嗚咽が幾年過ぎた今でも聞こえる。

やっと逢えたのにすぐお別れで、悲しくて、切なくて、でも帰ってきてくれたことが何より嬉しくて、まだちょっと心配で、そして熱した鉄のような火傷しそうな愛がある。


その愛に、やはり私の人生の青春を担った彼らのことを、思い起こさずにはいられない。




悲しくて、切なくて、それでもやっぱり大好きで。

そうして私は、また琥珀色千秋楽やテニミュ不動峰再演を観るのだ。

後追いの意地ってやつなのかも、ね。